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5.2 石英脈形成温度

地表露頭の石英−方解石脈等の流体包有物均質化温度測定結果から,最低温度が200度Cを示す等温線は混合層鉱物の卓越するIII帯に,150oCの等温線はスメクタイトの卓越する範囲をカバーするようにIII帯を取り囲んで分布する(Murakami and Feebrey,2001).この結果は浅熱水性鉱床形成に関連する粘土化変質帯の一般的な形成温度構造と非常に調和的である(茨城,鈴木,1990; Corbett and Leach, 1998).

従って,山ケ野鉱床及び安良岳南部変質帯を形成した熱水活動の中心はIII帯の分布域に一致することを示している.

5.3 岩石地化学探査

ここでは岩石中の化学組成を用いて,鉱化に関連する各変質帯の地球化学的な特徴について明らかにする.取り扱う元素はAu,Ag,As,Hg,Sb,K,Na,Ca,Srである.通常,岩石微量化学組成データは,分布する地層固有の化学組成要素(バックグラウンド値)や鉱化作用に関連する元素変動要素を含んでいる.経験的に,大雑把な試料採取間隔(1km2で1-2個)では分析値の80-90%,細かな試料採取間隔(1km2で50個)では60-70%が,分布する地層固有の化学組成を反映する傾向がある(Fletcher, 1997, 私信).これら各分析元素の地層固有の化学組成値と熱水変質作用に起因する異常値の単元母集団間の境界値(しきい値)は,各元素の分析値の累積頻度分布図を描き,直線,すなわち正規分布からの偏倚に着目し,主要線分間の変曲点を読みとることによって決定した(Lepeltier,1969;大津ほか,1984).単元母集団が3-4個に分割される場合,分析値の高い方から2つの母集団を異常値として抽出する方法が効果的である.



第6図  山ケ野鉱床周辺における岩石中に含まれるのAu,As,Hgの濃度分布.

第6図にAu,As及びHgの濃度変化分布図を示す.III帯の分布域で山ケ野鉱床の含金石英脈分布域北部でもある金山集落周辺を中心としてAu高濃度異常域,外側に向かってAs→Hg高濃度異常域の順に分布する傾向が読みとれる.一方,同じくIII帯が分布する安良岳南部変質帯では,高濃度のHgはドーナツ状にIII帯を囲んで分布するが,Au及びAsの異常域が殆ど見受けられない.

低硫化系浅熱水性金鉱床における垂直方向の元素変動の特徴は以下のようである(Berger and Eimon, 1983).
1)Hg等の揮発性元素は熱水変質帯中で最も形成温度の低い変質帯,特に古地表面で最も濃度が高い.
2)古地表面より下位の石英が晶出するような粘土化・珪化変質帯では,AsやSb等の元素が深度の増加に伴い濃度が上昇.
3)石英とイライトまたは氷長石が卓越するような比較的高温で形成される変質帯では,AuやAgなどの金属元素が濃集する傾向がある.

一方,低硫化系浅熱水性金鉱床の中でも高品位鉱床である菱刈鉱床の場合,地表では鉱脈直上にHgの高アノマリを形成するものの,金鉱脈の発達する下位レベルでは散発的にしか認められない(通商産業省資源エネルギー庁,1992).つまり,Au及びAsの高アノマリーとHgの低アノマリーの組み合わせで特徴付けられるIII帯は,実際の含金石英脈の分布域と一致していることから,これらの元素出現パターンは金鉱化作用の卓越するレベルを表していると考えられる.しかしながら,同じくIII帯の分布する安良岳南部変質帯ではHgアノマリーの消える中心に認められる石英脈が顕著な金の高アノマリーを示さない(第7図).


第7図  山ケ野変質帯及び安良岳南部変質帯における金属元素分布と変質帯の関係.

このことは,地表レベルでの安良岳南部変質帯の金鉱化ポテンシャルが低いことを示していると推察され,残念ながら今回の調査では新規鉱床を発見するには至らなかった.

以上の結果に基づき,次章以降に岩石化学組成比を用いた探査指標の開発を試みたので,その内容を紹介することとしたい.

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MURAKAMI Hiroyasu (2004) : Elemental ratio as an indicator for geochemical exploration: Application for the Yamagano Low sulfidation epithermal Au-Ag deposit