エネルギー技術評価・研究開発計画策定支援

  Energy Technologies Evaluation and R&D Planning /English/



遠藤栄一 endo.e@aist.go.jp
田村佳彦 y.tamura@aist.go.jp




    電子技術総合研究所 エネルギー技術評価ラボ
   http://www.aist.go.jp/ETL/etl/divisions/~6436/
     省エネルギー技術の総合的効果把握手法の確立調査 (発表論文 i〜iii)
   独立行政法人 産業技術総合研究所 http://www.aist.go.jp/
    ライフサイクルアセスメント研究センター  http://unit.aist.go.jp/lca-center/



  研究の経緯
 
本研究は,旧電子技術総合研究所エネルギー技術評価ラボにおいて,ニューサンシャイン計画の「省エネルギー技術の総合的効果把握手法の確立調査 省エネルギー技術評価に関する研究」(1996〜1999年度)として,また同エネルギー部の経常研究(2000年度)として実施してきました。2001年4月の独立行政法人化後も,産業技術総合研究所ライフサイクルアセスメント研究センターを中心に,引き続き研究を進めています。

  研究概要
 
背景   研究開発の効果的かつ効率的な推進が求められる一方で,その計画策定は,一般には,専門家の直感や総合的な判断に基づいています。このような意思決定を合理的かつ説得力のあるものにするためには,科学的分析手法の利用が不可欠です。分析手法を適用することによって,過去の研究開発計画の妥当性を検証できるだけでなく,将来の研究開発計画の適切な方向も明らかにできます。
 
目標   本研究では,エネルギー技術の研究開発計画策定における意思決定支援のための分析手法を確立することを目標にしています。すなわち,エネルギー技術分野における研究開発の費用効果分析を通じて,適切な資源配分を明らかにする方法や,エネルギーシステム分析を通じて,適切な研究開発目標を明らかにする方法を提案すること,および,それらの方法を実際の研究開発に適用し,研究開発計画の妥当性の検証や最適化を通して,有効性を実証することをめざしています。
 
内容   本研究では,まず,エネルギー技術の研究開発の費用効果分析手法を提案します。本手法は,累積研究開発費と技術指標との関係をあらわす技術進歩モデルを利用し,その微分係数として得られる投資効率に基づく点を特徴とします。本手法をわが国の(ニュー)サンシャイン計画における太陽光発電の研究開発に適用し,投資効率の比較を中心とする費用効果分析を実施します。
 また,研究開発計画を研究開発資源の配分問題ととらえ,研究開発の投資効率を規範とする資源配分モデルを用いて,研究開発投資の最適化をはかる方法を提案します。わが国の太陽光発電の研究開発,導入助成を対象とする資源配分モデルを開発し,研究開発費や補助金といった政策資源の配分を最適化するための分析を計画しています。これによって,いつ,どの技術に,どれだけの資源を投資すればよいかを明らかにできます。
 さらに,エネルギーシステムモデルを用い,わが国における太陽光発電などのコストと導入量との関係を分析するよう予定しています。これによって,他のエネルギー技術との競合を考慮した,適切な研究開発目標の設定が可能になります。  資源配分モデルとエネルギーシステムモデルによる分析とを合わせることで,例えば,太陽光発電を一定量導入するために達成が必要なコストの研究開発目標,この目標を実現するのに必要な資源配分を明らかにできるようになります。

  成果概要
 
技術進歩モデル   技術進歩を累積研究開発費と技術指標との関係としてモデル化し,その微分係数として求まる研究開発の投資効率に基づいて費用効果分析をおこなう方法を提案しました。この方法では,技術進歩モデルが重要な役割を担っています。そのため,太陽電池の変換効率を例に,技術進歩モデルに用いられる成長曲線の適合性を比較し,(Bi-)Gompertz曲線の適合性がよいことを確認しました(発表論文2, 3)。さらに,技術進歩モデルの変数として累積研究開発費を選択することの妥当性を確認しました(発表論文4)。また,得られた技術進歩モデルを用いて太陽電池の変換効率の技術予測もおこなっています(発表論文1)。
 
太陽電池の研究開発の費用効果分析   わが国の(ニュー)サンシャイン計画における太陽電池の研究開発の費用効果分析をおこないました。まず,太陽電池の種類等別,研究開発の目標別に研究開発費の使途を推定しました。この値に基づいて太陽電池の技術進歩をモデル化し,多結晶シリコン太陽電池とアモルファスシリコン太陽電池の製造原価低減に対する投資効率を推定し,比較しました。その結果,研究開発目標と研究開発費の関係が適切に設定されていない可能性や,研究開発費の配分に導入助成事業の予想される成果が十分反映されていない可能性のあることが明らかになりました(発表論文7, 10, 12)。
 
太陽光発電の研究開発,導入助成の費用効果分析   量産効果による製造原価低減の程度を推定し,太陽電池製造原価低減の観点から,わが国における太陽光発電の研究開発と導入助成との投資効率を比較しました。その結果,現在の製造原価低減に対する投資効率に基づく場合,導入助成事業の開始時期は若干早すぎた可能性はあるものの,その後の補助金の額は妥当な水準であることが分かりました。一方,将来の製造原価低減に対する想定投資効率に基づく場合,導入助成の投資効率は,研究開発の投資効率より全般にかなり低く,現在の製造原価低減,生産規模拡大のための手段といった別の意義づけが必要であることが明らかになりました。(発表論文8, 9, 11)。
 
資源配分モデル   太陽電池の研究開発に着目し,研究開発資源の最適配分問題を数理計画法の一つ,非線形計画法で定式化し,モデル化に着手しました。このモデルは,技術進歩モデルのほかに,量産効果モデルや市場原理モデルからなります(発表論文5, 6)。
 
  現在の研究課題
 
日米の太陽光発電研究開発の投資効率比較  わが国とアメリカにおける太陽光発電研究開発の投資効率を比較し,研究開発計画の妥当性を検証します。予備的な分析からは,アメリカの投資効率の方が高いという結果が得られています(発表論文13, 14)。アメリカにおける研究開発費や研究開発目標と成果の調査をさらに進めるとともに,分析に為替レートやデフレータをより正確に反映するよう考慮中です。
 
太陽光発電と燃料電池との研究開発の投資効率比較  わが国の(ニュー)サンシャイン計画における太陽光発電と燃料電池との研究開発の投資効率を比較し,研究開発計画の妥当性を検証します。これまでに,燃料電池研究開発の費用効果分析をおこなうためには,どのような調査・分析が必要か,考察しました(発表論文15)。
 
資源配分モデルによる分析  研究開発と導入助成を対象とする,太陽光発電の技術開発に関する政策資源の配分モデルとして開発を進め,最適化,感度解析を通して,資源配分と太陽光発電のコストとの関係を分析するよう計画しています。分析を通して,時期,対象技術,額の観点から,投資の妥当性を検証するとともに,適切な投資を提案したいと考えています。
 
エネルギーシステムモデルによる分析  MARKALモデルを用いたエネルギーシステム分析によって,他のエネルギー技術との競合を考慮しながら,わが国における太陽光発電などのコストと導入量との関係を明らかにする予定です。分析を通して,設定されている研究開発目標の妥当性を検証するとともに,適切な研究開発目標を提案していきたいと考えています。

  将来構想
 
計画立案過程のシステム支援  研究開発の計画立案プロセスを支援するシステム環境の設計を計画しています。資源投入と研究開発の実績をもとに、資源制約、計画立案者の意図・意向を反映したシナリオ(計画案)が作成され、最適化モデルにより、シナリオに沿った実績が見積もられ計画値が確定します。予想実績を評価し検討比較されることで計画が策定されます。このような計画立案プロセスをサポートするのが目的であり、また、計画案に沿った展開を評価するとともに、計画の修正変更にも活用できます。


 発表論文等



[2002.5.22 updated]