微量水分の発生法
ここでは、世界の標準研究機関で主に採用されている、2つの微量水分発生法について説明します。
霜点発生法式
図2に霜点発生装置の概念図を示します。これは微量水分の基礎で出てきた、低温の水蒸気発生槽を利用する方法です。飽和した気体を発生槽から取り出すことができれば、氷の温度と等しい霜点の湿潤気体となります。

注:実際の霜点発生装置は、図には示されていない熱交換器等が必要となるため、もっと複雑な構造をしています。
簡単な原理ですが、低湿度の発生法としては信頼性が高く、世界のほとんどの標準研究機関で、この方式を中核とした湿度発生装置を使って、低湿度の一次標準を実現しています。
原理的には、氷の温度を下げる事によって、いくらでも低い霜点の気体発生が可能です。しかし現実的には、低温では、氷からの蒸発水分量が極めて少なくなることや蒸気圧が温度変化に敏感になることから外乱の影響を受けやすくなり、安定した湿潤気体の発生が困難となります。また、完全な飽和の実現とその確認も温度が低くなるほど難しくなります。
NPL(英国物理学研究所)やNIST(米国標準技術研究所)などでは、この方式を基礎とし、装置に様々な改良を加えることで、微量水分領域への拡張を行っています。
拡散管方式
拡散管方式とは、温度と圧力が制御された発生槽内で、拡散管の出口から発生する微量の水蒸気を流量制御された乾燥気体と混合させて、湿潤気体を作る方法です(図3)。

気体の湿度は、水分蒸発による容器(拡散管セル)の質量変化の測定と、乾燥気体の流量測定によって決定します。霜点発生法式で問題となる、低温での飽和の実現とその確認を必要としません。また、蒸発した水分と乾燥気体の量を直接測定して湿度を決定するため、霜点発生方式に比べて、国際単位系(SI)へのトレーサビリティがより明確です。
産総研では、一次標準としては世界初となる、拡散管方式による微量水分領域の湿度標準を開発しました。測定の不確かさを最小にするために、水分蒸発速度測定に磁気吊下天秤を、気体流量測定に臨界ノズル(音速ノズル)式流量計を採用しています。

磁気吊下天秤は、図4に示されるように、発生槽内の拡散管セルを、磁力によって外部の電子天秤に吊り下げる構造をしています。これにより、蒸発によるセルの質量減少速度(水分蒸発速度)を、水蒸気発生を中断させることなく、連続的に測定することができます。一方、臨界ノズル式は、臨界ノズルを用いて気体流速を一定(音速)にさせ、気体密度とノズル断面積の情報を使い、質量流量を求める方法で、気体流量の測定法として信頼性が高い方法です。臨界ノズルは、国内の気体流量の標準供給において、特定二次標準器として用いられています。