産業技術総合研究所
地質調査総合センター
ここでは,東宮のところに来た火山等に関する質問とその答えを掲載しております.
あくまで東宮の分かる範囲で答えておりますので,勘違いなどによる誤りがありましたら申し訳ありません.(気のついたことがありましたら御連絡いただければ幸いです.)
なお,火山や地震等に関するご質問がある方は, 下記の相談コーナーもぜひ御利用下さい.その方がより確実だと思います.(^^;
(東宮個人が対処するのにも限界がありますし...)
- 地質相談所(地質標本館)
- 火山学者に聞いてみよう!(日本火山学会)
(なお,Q1〜Q6は東京の半田さんから寄せられた御質問を中心に構成しました.)
Q2.の答えと一部重なりますが,これはマグマの種類が大きく違っているためです.
有珠山のマグマは「デイサイト質」といって,粘性(粘り気)の大きいタイプです.
それに対して,
三宅島のマグマは「玄武岩質」で,粘性が小さく,さらさらと流れるタイプです.
この違いのため,地下深くからマグマが上がってくるスピードが違うと考えられます.(玄武岩質の方がスピードが速い.)
マグマが地下から上がってくる時には周りの岩盤を押しのけて上がってきますから,
そのときに岩盤を歪(ひず)ませたり割ったりすることによって
地殻変動や前兆地震を引き起こします.
これによって噴火が近いことが“予知”できます.
有珠山の場合は,過去の噴火も含めて,前兆地震の期間がだいたい数日間でした.
→ http://staff.aist.go.jp/a.tomiya/usu/suii.html に過去の噴火のまとめの表.
三宅島の場合は,前兆地震の期間がだいたい数時間でした.
→ http://staff.aist.go.jp/a.tomiya/miyake.html に過去3回の噴火のリスト.
つまり,予知が“遅れた”というよりは,三宅島の方が現象の展開が早かった,というべきなのだと思います.
マグマが違えば,噴火の種類も違います.
#噴火の種類については,http://staff.aist.go.jp/a.tomiya/usu/suii.htmlに少し説明.
有珠山の場合は,プリニー式噴火(噴煙を10km以上もの高さまで上げる爆発的な噴火で,大量の軽石が放出される),火砕流,溶岩ドーム,などによって特徴づけられます.ただし,2000年の噴火では,何らかの理由によってプリニー式になりそこなってしまい,マグマ水蒸気爆発というタイプの噴火になりました.
三宅島の場合は,溶岩噴泉(液体のマグマが噴水のように出る),溶岩流,ストロンボリ式(液体のマグマのしぶきが間欠的に出る),などによって特徴づけられます.ただし,2000年の噴火では,これまた何らかの理由によってマグマ水蒸気爆発あるいは水蒸気爆発というタイプの噴火になりました.
そういう意味では,2000年噴火に関しては有珠山も三宅島もよく似た噴火の種類だったと言ってよいかもしれません.実際,噴煙の見かけや噴出物(火山灰)の性質は両者で似ています.しかし,地下におけるマグマの動きは両者ではずいぶん違っていたらしいと考えられています(詳しくは今後解明されることでしょう).
有珠山と三宅島で地震の種類が違うか,については,同じと考えてよいでしょう.
どちらも,地下でマグマが動いたことによって周りの岩盤を歪ませたり割ったりすることによって起こる地震,と考えて良いと思います.
一方,噴火の「推移の予測」,という点では違うと言えましょう.
有珠山はデイサイト,三宅島は玄武岩,というように火山によってマグマの種類がほぼ決まっていますから,噴火が始まってからの推移は火山によって変わってきます.
そこで,噴火によってどのような被害が予想されるか,そのためにどのような対策が必要か,といったことは噴火の種類(火山)ごとに違ってきます.
「ハザードマップ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
これは,噴火の被害の予測を地図に示したもので,
それぞれの火山ごとに作られています.
有珠山噴火のときにはこのハザードマップがとても役に立ちました.
#「ハザードマップ」についてはQ6.をごらんください.
もし地震を予知しようとするなら,特定の場所に着目して,集中的に観測をする必要があるでしょう.そして,それを試みているのが東海地震予知のプロジェクトなのだと思います.
その意味では,次の関東大震災は今のところ予知が難しいと思います.
#このあたりについては,どうか地震の専門家に聞いてみて下さい.
(※)ただし,地震の起きるであろう時間の精度(誤差)が"±数十年"でも良ければ, すでにいくつかの地震について“予知”がされています.一方,噴火の予知はだいたいできると思っています.
例えば,次の「宮城県沖地震」は,平成11年に出されたある報告によれば,
今後5年以内に起こる確率が7.8%,10年以内が19.4%,20年以内が46.2%
などと算出できるとのことです(まだ試案の段階のようですが).
→ http://www.jishin.go.jp/main/chouki2/shuhou/main.html(政府・地震調査研究推進本部のページ)
ただし,この場合の「予知」とは「噴火の開始」ということについての話です.これに対して,
いざ噴火が始まってから「噴火がどのように推移するのか」とか「噴火がいつ終わるのか」ということについての予知はほとんど成功していないのが現状です.
(その意味で,有珠山は開始・推移ともに予知がかなりうまくいきましたが,三宅島については推移の予知はあまりうまくいったとは言えないでしょう.例えば,6/26の段階で三宅島雄山山頂火口の陥没やその後繰り返される山頂噴火は想定されていませんでした.ただし,7/8や8/10の各々の噴火については直前予知が成功していますので,「直前予知は成功,推移予測は不成功」といったところでしょうか.)
そうしてみると,富士山の噴火開始については多分予知はできると思います. ただし,予知ができるのは噴火開始の数時間前,などということになってしまうかもしれませんが...(^^;
有珠山噴火では,噴火が予知された後の住民の避難が混乱せずにうまく進みました.
これは,有珠火山観測所の岡田さんが日頃から有珠山の噴火に対する備えを住民に説いてきたことが大きいと思います.ハザードマップも各家庭に配られていました.
ある意味,日頃から“長期的な噴火予知”はされていたわけです.
このことはとても重要なことだと思います.
また,日本でどこの火山のハザードマップが作られているかのリストが
http://www.akina.ne.jp/~bandaimu/hazardmap01.htm(磐梯山噴火記念館のページ)
で見られます.
最近,産総研では「火山防災マップデータベース」の整備を進めており,下記のページにまとめられています:
http://staff.aist.go.jp/m.miyasaka/hazardmap_index.html(産総研・宮坂瑞穂さんのページ)
それぞれのマップが具体的にどこで入手できるかは私にはよくわかりませんが, 一般的にはその火山をかかえている自治体の役場に問い合わせるのが早道ではないかと 思います.
[以下はやや古い情報]
ちなみに,
日本火山学会の中には,ハザードマップに関するワーキンググループがあって,
世界のハザードマップについて現在いろいろと検討しているところと聞いています.
冒頭で挙げた「火山学者に聞いてみよう!(日本火山学会)」でハザードマップに
ついて問い合わせてみると,いろいろと詳しい話が聞けるかもしれません.
はじめに地下10kmほどの深さに溜まっていたマグマが上昇を開始しました.それが地下数kmの深さにあるマグマ溜まりに注入され,あたかも玉突きのように,地下数kmにあったマグマが地表に向けて上昇を始め,それが地表に到達して噴火しました.
上昇してきたマグマは,地表に達する直前に,浅い所で地下水脈に触れたため,地下水が急激に熱せられて瞬間的に沸騰し,はげしい爆発(マグマ水蒸気爆発)を起こしました.これにより,大量の火山灰や岩片を吹き飛ばすような爆発的な噴火になりました.
http://staff.aist.go.jp/a.tomiya/usu/suii.html#phreato
http://wwwsoc.nii.ac.jp/ssj/naifuru/vol20/v20p2.html(学協会情報発信サービスのページ.ただし記事は東宮が執筆.)
2000年噴火のときは,住宅街のすぐ横に火口が次々に開いて,爆発を繰り返しました.
このため,火口に近かった何軒かの家は,もう住めなくなって,
そのまま放棄されています.
しかし,町そのものは,場所を移しませんでした.
現在は,噴火前とほとんど同じように生活しています.
(実は,2000年噴火の後に,町をもっと安全な場所に移したらどうか,という議論も出ました.しかし,地元の人たちは,現在の場所に住み続けることを選びました.)
「46億年 地球は何をしてきたか?〜地球を丸ごと考える2」
丸山茂徳著(岩波書店) ISBN4-00-007902-6 1300円
「プリュームテクトニクス」によれば,
マントル内部での流れは,連続的な流れ(流れるプールのように移動する)というよりは,
間欠的な流れ(プリュームと呼ばれる塊がポコンポコンと移動する)になっています.
このような対流パターン(プリューム)について,身近な例を挙げるとするなら,
コーヒーや紅茶にミルクを注いだ時に,しばらくするとプカリプカリと浮かんでくる
白い塊(キノコ雲のような形をしている)が,プリュームです.
マントルの中を上昇するプリューム「ホットプリューム」(周りよりも温度が高い
ため,軽くなって上昇する)にはいくつかありますが,
それらは「ホットスポット」として地上に現れます.
「ホットプリューム」のうち,特に大きなものは「スーパープリューム」(超プリュ
ーム)と呼ばれ,南太平洋とアフリカの2ケ所にあります.
「ホットプリューム」が上昇してくると,「洪水玄武岩」の噴出が起こったり,
大陸(プレート)の「分裂」が起こったりします.
大西洋が開き始めたきっかけも,ホットプリュームの上昇です.
つまり,「海嶺」は,もともとは「ホットプリューム」によってできた割れ目だった
のです.
一般には,「海嶺」の位置はどんどん動いてしまいますので,現在「ホットスポ
ット」として見られるものの多くは,海嶺とは別の場所に存在しています.
ただし,アイスランド・ホットスポットは,現在でも大西洋中央海嶺のまさに真上
(真下?)にあります.
一方,マントルの中を下降する「コールドプリューム」もあります.
コールドプリュームにもいくつかありますが,最大のものはアジア大陸の下にあります.
「コールドプリューム」が存在すると,そこにはマントルの下降流があるため,
周囲からプレート(大陸)が吸い寄せられてきます.
アジアの周辺で,沈み込み帯(日本列島など)や大陸同士の衝突(インドが衝突して
ヒマラヤ山脈ができるなど)が多いのは,これによって説明されます.
このように,大陸の分裂(海洋・海嶺の形成)や集合(超大陸の形成)が,
巨大なプリュームの上昇・下降によって説明できる,というのが,
「プリュームテクトニクス」の眼目と言えます.
そして,プレートテクトニクスの原動力や,海嶺・海溝がなぜその場所にできたのか,
といったことが,これによって統一的に理解されます.
まとめれば,地表付近(深さ数百km以内)では,「プレート」の運動が支配的に
見えるけれども,その運動の原動力となっているのは,マントル全体を支配して
いる「プリュームテクトニクス」である,ということです.
