産業技術総合研究所   地質調査総合センター
本ページの内容は,産総研・地調の山元孝広氏によってまとめられ,2000年8月に火山噴火予知連絡会に提出された資料を,web用に編集したものです.

磐梯火山での噴火シナリオ

工業技術院 地質調査所
(現・産業技術総合研究所 地質調査総合センター)

1.水蒸気爆発ケース

【履歴】 磐梯火山では最近約2万年間にマグマの噴出はないものの,最近5千年間で
堆積物として記録が残る規模の水蒸気爆発が1888年噴火や806?年噴火を含めて4回発
生している.その再来間隔は1100〜1700年と大きいが,これらの噴火の間にも活発な
噴煙や噴気活動があったことが記録されている.また,1888年噴火や2.5千年前噴火
では山体崩壊が起きている.さらに1888年噴火では水蒸気爆発に伴い希薄な火砕流が
発生し,山麓まで約6km流走して集落を破壊した.噴火地点は中ノ湯から1888年崩壊
壁の南縁部を経て赤埴山山頂北側にかけての西北西−東南東ラインに沿う傾向がある.

【予想される現象】 今回の火山性地震活動は,最近数千年間に起きているような熱
水系の活動に伴うものである可能性は大きい.今後地震活動が活発化した場合には,
これに伴い山頂部の西北西−東南東ラインで小規模な水蒸気爆発が起きることは大い
にあり得よう.また,比較的大きな地震により(M5以上)山体の一部が破壊された場
合には,山体崩壊と急減圧による規模の大きな水蒸気爆発が発生することもあり得る.

2.マグマ噴火ケース

【履歴】 磐梯火山では約25万年前の古期山体の形成後,17〜18万年間の休止期を経
て新期山体の活動が始まった.新期山体の活動ではマグマ噴出量が10-1 km3 程度のデ
イサイトマグマによるプリニアン噴火(葉山2:7〜8万年前;葉山1:約4万年前)を
経て,安山岩の小型の成層火山体(小磐梯や大磐梯山体)が形成される活動が2サイ
クル起きている.特に葉山1噴火ではデイサイトの山体への貫入に伴い,セントへレ
ンズ型の山体崩壊が起きている.

【予想される現象】 約2万年間の休止期を経て新たなマグマの上昇があるとすると,
その活動は新期の活動で起きたような10-1 km3 程度のデイサイトマグマによるプリニー
式噴火である可能性が大きい.葉山1及び葉山2噴火ともプリニー式噴火に先行して
水蒸気爆発や山体の変形が起きており,目立った先行現象があるものと期待される.
また,両噴火とも山麓への火砕流(軽石流)の流下が起きており,次の噴火でもその
発生が懸念される.

参考文献 山元孝広・須藤 茂(1996)地調月報,47,p.335-359.

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Created:Aug,20,2000